銀世界 -II- de 縦書き

ティの味がした  白銀の世界でのファストキスはレモン は紅茶の缶に口を付けながら微笑む  混乱したまま雪景色を背にしたクを見詰め こういうことだと思うよ
ボクも初めてだからよく分からないけど にこやかに笑う  突然の出来事に硬直する俺から身体を離す 静かに重ねられる  熟した果実のように柔らかく暖かな唇が 一息ついてこちらを振り向くと抱き付いてくる  手に持った紅茶を傾け喉に流し込むク 恋人っていう関係がいまいち分からないんだ のこと好きだけど彼女とか
しまう 何となく冷静な印象とのギャップに戸惑って  そんな仕草がとても可愛らしくて普段の きつつ呟く  紅茶の缶を指でもてあそびながらうつむ に誰か好きなら今回は諦める ボクはキミのことが好きでもキミが他 ただけ 何とか大丈夫突然言われたからむせ 大丈夫
心配そうに顔を覗き込んでくる  クはこぼさないように紅茶を受け取ると を噴き出しそうになった  唐突にかけられた台詞に飲んでいた紅茶 ボクの事は好き
落ち着いたところで返事が欲しいんだけど  うんうんと頭を上下させるク 少し熱いが何とか飲める  そんな感情を振り払うように缶紅茶を傾け 見詰められると気恥ずかしくなる  相変わらずの感情を読めない表情じっと
まだまだ素手で持つには熱いくらいだ  手渡された紅茶は少し冷めていたものの はい熱いから気を付けて プルトップを引き開ける  そう言うとバッグの中から缶紅茶を取り出 寒いでしょ飲み物もあるよ 二人用じゃないから無理そうそう 勿論顔はクの反対側に向けている  照れ隠しにぶっきらぼうな口調で言い放つ そんなくっついてくる事ないだろ た場所に腰かけるとクは腕を絡ませてくる  その台詞に慌てて座布団の端に寄る空い トの上に座らせるつもり
お座布団は1つしかないのそれともシ は大きく空いている場所はたくさんある  場所を詰めろと言われてもレジャ もう少し場所詰めてボクが座れない
情で頭を掻く  クえへへとでも言い出しそうな表 な生徒は屋上に縁がない 前提が間違ってるこの学校じゃまとも そう
屋上では必需品だと思うけど
トなんて学校に持って来ないだろ 準備がいいな普通座布団とかレジャ トの上に座布団を敷き座る  確かに立っているのもおかしいのでレジャ
はいそこに座って してくる  軽く微笑むと少し大きめの座布団を手渡
だって他の人はそんなこと知らないと思う 何が得なんだか理解できねぇって り出し足元に広げる  そう言ってバッグからレジャトを取 した気分 キミって結構照れ屋なんだねちょっと得 顔が紅くなるのを感じる  同じ事を考えていた事に気恥ずかしさを覚
 クは振り向いてにっこりと微笑む この間もこんな雪景色だったよね そりゃ雪だし 払う  くるぶしまで埋まった足を引き抜くと雪を うわ冷た  それが公園での一件を思い浮かべさせる いので誰にも荒らされていない雪  こんな時期に屋上を使おうとする者はいな なっていた  屋上は先日の積雪の名残で一面の銀世界に
かるよ 気にしない気にしない早くしないと見付  そう言うと扉を開き腕を絡めて引っ張る 無断で借りてきた んだ
!?
なっそれじゃどうして鍵なんか持ってる
誰にも言ってないよ
屋上に上がる許可なんて誰に取ったんだよ 屋上に続く扉の前でクが鍵を開けていた  そんなことを考えながら階段を昇って行くと
とてもユニクだ  どことなくセンスのずれた不思議な言動 と可愛い女の子  容姿だけ見ればどこにでもいそうなちょっ 何を考えているのか分からない冷静な表情  誰とでも気軽に会話するクよく笑うが うになるとは思わなかった  少し前まではこんな雰囲気でクと話すよ 微かに目を細める  時折後を振り向いては付いてくる事を確認 を昇る  クはリズミカルな足音を立てながら階段
仕方なく付いてゆく事にした  逃げ込む場所の当てなんて思い付かないの 気付いたが肩には大き目のバッグ  くるりと反転すると階段を昇っていく  鍵の付いた木札を揺らし軽く微笑む と思って鍵借りてきたよ付いて来て 理由は分からなかったんだけど助けよう ないんだこんな所で とにかく連中に見付かったら只じゃ済ま 切る  涼しげな表情は一切変えず淀みなく言い うかもしれないでしょ
放課後まで待ってたら誰かに先越されちゃ 員揃ってる状態で告白してきたのはお前だ 俺が口止めしたにも関わらずクラスに全
しても意味がない事を知った  我が道を突き進むクには間接的に指摘 な表情のまま首を傾げる  心当たりがないとでも言いたげに涼しげ もしかしてボクのせい
なったのか分かってるのか
!?
なっ誰のおかげで俺がこんな羽目に  騒動の発端無敵の不思議系がいた つめる少女が一人  慌てて振り向くと座り込んでこちらを見
ところでこんな場所で何してるの
廊下を横切ろうと  足元から聞こえる抑揚のない声にただ頷き いないようだね よし誰もいないな ように通路を伺う  左手には階段右手には廊下首を伸ばす 校舎の中で壁に背を張り付ける  放課後の廊下生徒の騒ぎ声がこだまする さてここからが問題だ



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2006-07-09作成
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