吉野家 そんな事より聞いてくれないか、男よ? 先日近所にある吉野家という外食産業の店舗に行ったのだが、 人が多くて席が埋まっていてな。席に座る事も出来なかった。 そこで気が付いたんだが、店外に垂れ幕が下がっていて150円引きと書かれていた。 あまりの馬鹿馬鹿しさに開いた口が塞がらなかったよ。 君たちは150円引き如きで普段来る事のない吉野屋に来るのか? 愚かな。 150円、150円なのだぞ? 見れば親子連れもいる。一家総出で吉野家とは余りにも短絡的だろう。 『よし、パパ特盛頼んじゃうぞ』などと言い放つ姿は哀れで涙を誘う。 君たち、150円差し出すのでその席を開けたまえ。 吉野家という空間はもっと殺伐とした空気を漂わせるべきだ。 Uの字テーブルの相向かいに着席した者といつ争い始めてもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気が良いのだ。女子供の出る幕はない。 私か? それは瑣末事だ、気にするな。 その後席に着く事が出来たのだが、隣の者が『大盛ツユダクで』などと言い放つ。 そこで再度怒りが頂点に達した。 貴様、ツユダクなぞ今時頼む者など皆無だ。痴れ者が。 まるで世界の頂点を取ったかの如き表情を浮かべ『ツユダクで』だと? 貴様は心の底からツユダクを食べたいのか問いたい。問い詰めたい。時間の許す限り問いただしたい。 貴様はツユダクと言いたいだけなのではないか? 吉野家通の私の見解では、今、吉野家通の間で支持されているのは『ねぎだく』。これ以外ない。 『大盛ねぎだくギョク』これが食通の注文だ。 『ねぎだく』というものは玉葱が通常よりも多く含まれる。しかし、肉は少量。 それを大盛りで頼み、ギョク。卵だな。これこそ至高の牛丼だ。 しかし、これを注文すると次回の来店時から従業員に動向を探られる危険も伴う諸刃の剣となる。 習熟していない者には推奨出来ない。 貴様たちのような素人は牛鮭定食でも食べているがいい。