ダイニングテーブルには昨日の料理が大量に並べられていた。
そしてハイネックのニットにミニスカート、オーバーニーソックスの夏海。
コイツ侮れねぇ……
夏海「ふぅ〜ん、公人はこういうのが好きなんだ〜」
ニンマリと笑い、これ見よがしに脚を強調させる。
うぅ、絶対領域がぁ……
空「やはり夏海はこういう時、頼りになりますね。また今度服を見立てて下さい」
素直に感心してるクー。
夏海「公人ってかなり単純だから大体見当付くし。暇な時にでも見に行きましょ」
公人「頼むからあまり刺激しないでくれ……」
夏海「それなら心配ないわよ。クーに出し抜かれない程度にするし」
しれっと手抜きする事を明言する。
空「公人さん安心して下さい。こう見えても物覚えはいい方ですから」
どこからツッコミ入れるべきか考えてみた。
公人「これは多すぎだろ……」
夏海「どのくらい食べるか分からないから、一応ね」
公人「それと今日は自分で食べるから」
しっかりと釘を刺すと同時に不満の声を上げる二人。だが朝からまた面倒事を背負い込む気にはならないので、聞こえない振りで押し通す。
理奈「朝から無駄に元気ねぇ。あまり押せ押せで行くと公人君に嫌われるわよ」
身支度を終え空いている席に座るリン。面白いからいいけどね、と言って食べ始める。
空「リン。空いている部屋に公人さんが入居する事になりました」
理奈「構わないわよ、どうせそういう事になるだろうと思ってたし」
全部お見通しかよ。
夏海「まぁリンが断ろうと公人には絶対に来て貰うけどね」
理奈「まぁツンならそう言うだろうと思ったし、無意味な事はしないわ」
ピクっと硬直する夏海。ニヤリと笑うリン。
またなのか……
空「二人は放っておいて構いません。あれが二人のコミュニケーションの取り方ですから」
黙々と食事を進めるクー。
公人「まぁ俺としては矛先がこっちに来なければいいんだけどね……」
食事も終わりリビングのソファで淹れたての紅茶を飲む。
う〜ん、一人暮らしでは味わえなかった優雅な生活だなぁ。
空「公人さんは今日の2コマ目の講義に出るのですか?」
何の講義を取ってるかまで調べ上げてるのか。
公人「一応出ておこうとは思ってるけど」
夏海「じゃぁ一緒に行きましょ。両手に華を味あわせてあげるわよ」
公人「そういうのはやめろ」
夏海は意地悪く笑う。夏海ならホントにやりそうだしなぁ。
空「でも私は我慢できそうにありません」
クーはそう言うと腕に抱きつき頬をすり寄せる。
理奈「夏海もさせて貰えば〜」
ふん、と横を向きつつも腕を絡めてくる夏海。人が悪いよリン……
理奈「じゃぁ、そろそろ私は出るから。それと夏海、ツンって呼ばれたい?」
夏海「そんな訳ないでしょ」
理奈「なら今まで通り夏海と呼んであげるわ。目的は達成したし」
何の事か考え、その意味に気付いたらしい夏海。
夏海「リン…… ありがとう……」
理奈「この貸しは高く付きそうね。どんなお礼して貰うか考えておくから期待してなさい。
クーも頑張りなさいよ」
公人君またね〜、と言いつつ去って行く。ここで一番厄介なのはリンだと再確認した……
出かける時間までゆったりと雑談して過ごし、充分なゆとりを持って出かける。
まぁ昨日までは深夜まで起きていて、寝ても遅刻ぎりぎりになって慌てて起きるような生活だったというのもあるが、見慣れた景色も変わって見えるようだ。
空 「どうかしましたか?」
何気なく風景を見ながら歩いていたので、何かあったのか心配させたのかも知れない。
公人「あぁ、今までは慌しく生活してたのかも知れないと思ってね」
夏海「これからは長閑ながらも刺激的な生活を送らせてあげるわよ」
ふふふ、と妖しげに笑う夏海。誰かコイツをどうにかしてくれ……