目の前からは突進してくる男、横からはクー。ぶつかると思った瞬間重力が逆転した。
ゴッ、という音とともに右足の踵に鈍い痛みが走る。
そして気が付くと、クーに背中から抱かれるような形で普通に立っている事に気付く。
公人「あれっ、何が起こったんだ?」
夏海「残念ながら公人の勝ちみたいね。伊達が気付いたら、公人に纏わり付かないように言っておきなさい」
夏海が周りの連中に向かって言い放つ。
何が起こったのか理解できないが、足元にさっきの男が横たわっている。
空「どこか痛む箇所とかありませんか?」
心配そうな表情でこちらを伺う。
公人「ん、特に痛くないよ。つぅか俺、クーに投げられた?」
空「はい、申し訳ありません……」
小さくなって頭を下げてくる。どうしてクーが謝るかなぁ。
公人「クーのお陰で怪我一つなかったよ、ありがとう」
空「あ、はい。ですが、私達のせいで公人さんを巻き込んでしまいましたので……」
夏海「ほら、いちゃついてないで帰るわよ!」
強引に俺と腕を組むと引っ張る。それに合わせてクーも反対の腕に絡まってくる。そのまま男の横を通り過ぎる。夏海は踏む。
後の方から伊達さーんとか踏んで〜とか聞こえてくるが、係わり合いになりたくないのでホンキで帰る事にする。
公人「で、さっきの何?」
素朴な疑問をぶつけてみる。
夏海「何か親衛隊とか言ってたかな。前々からウザイと思ってたのよねぇ」
空「親衛隊ですか。夏海は凄いですね」
夏海「何言ってんのよ、半分はアンタ目当てでしょ」
空「そうなんですか? 興味ないので知りませんでした」
あ〜、やっぱり周りの男どもは放っておかないよなぁ。
夏海「公人。アンタ、何か失礼な事考えてない?」
コイツは被害妄想が強いな…… と、言われた後で失礼な事考えた。