特にする事ないんだよなぁ、と思いつつ歩く。
つぅかこの二人が俺と一緒に帰る理由はあるのか?
公人「言いづらいんだが、二人は帰る必要ないんじゃないか?」
空「公人さんの頭痛が酷くなって倒れるといけませんのでお供します」
夏海「クー、さっきの頭痛は精神的なものよ。伊達がいなきゃ問題ないって」
空「そうなのですか…… では、公人さんが伊達さんと出会わないように善処します」
その台詞だと善処って何となく不穏なイメージに取れるんだが勘違いだろうか……
公人「まぁ、俺はする事ないし部屋に帰ろうと思うんだけど──」
空「公人さんの部屋ですか。楽しみです」
夏海「まぁ、今日は暇だし付き合ってあげるわ」
……相変わらず俺の意思とは関係なく話を進めるんだな。
夏海「そうだ。丁度いいし、引越し済ませちゃいましょ」
空「夏海、それは実によい提案です。早速車の手配をしましょう」
公人「ちょっと待て。俺は何の用意もしてないんだって、そう簡単に準備が出来るわけないだろ……」
その後については激しく割愛したいのだが、車が到着する間に手際よく二人によって荷物が纏められ、生活に必要なものとゴミに分けられた。
しかもゴミとして不当に虐げられた愛蔵のビデオコレクション、年齢指定付き絵本……
当然二人の検閲が入り、趣味の方向性や深度について事細かく議論された。
最悪な事に、それを詰め込んだダンボール箱にバイオハザードマークを書き込まれ、研究資料として厳重保管と言い渡される。でもそれって生物災害なのか?
不思議な事に片付け&運搬で12時、3人でゆっくり食事をして部屋の掃除&家財搬入で午後2時。驚異的なスピードで引越しが済んでしまった…… しかも各種手続きはほぼ完了している。
人知を超えた処理能力だ……
夏海「思いの他簡単だったわね〜」
空「えぇ、持ち込む荷物もそれほど多くありませんでしたから」
そりゃそうだろ。家電製品は殆ど要らない&古いと言って処分されたし、実質持ってきたのは書籍と衣服くらいだし……
公人「ところでマイフェイバリットアイテムの事なんだが──」
二人の射竦めるような目で発言は撤回する。
空「あのような物がなくとも、私に全て任せて頂ければ社会復帰出来るようにご奉仕します」
夏海「クーにはちょっと無理そうなのもあったけどね〜」
公人「あ〜」
空「それは今後の努力次第で追々可能にしてみせます」
夏海「私なら今すぐにでも可能なんだけどね〜」
公人「もしもし……」
空「それを言うなら私に出来て夏海には出来ないものもありましたが」
夏海「う、……あんな趣味は更生させるべきものだし、正しい道に導いてあげるのが正道だわ」
公人「聞いてくれると嬉しいんだが……」
空「私なら今すぐにでも欲求を満たして差し上げる事が可能ですし、公人さんを私の虜にする事すら不可能ではありません」
夏海「うわあ、クーったらヒドイ女ね〜。私の愛で正常な嗜好に戻してあげないとだわ」
全然俺の声は届いていないようだ……
公人「…………買い物に行ってくる」
空「そうですね、生活必需品など買い揃えなければいけませんし」
夏海「仕方ないわね、私が色々と選んであげるわ」
俺の声聞こえてたたのかよ……
駅前にあるデパートへ行き細々とした生活用品を買い直したり、何故か俺の衣服まで見て廻る。
記念にするとか言ってお揃いの食器を新調したり、俺の意見ほぼ無視で似合う似合わないと言いつつ大量に衣服を買い込んでいく……
一体その金は誰が払うのですか?