09-03

夏海「う〜ん。結構買い込んだわね〜」
空「持てない分を配送して貰うといっても、まだこれだけ荷物がありますからね」
公人「つぅか今は払って貰ったから買えたけど、一体誰の金だと思ってるんだ……」
夏海「別に支払って貰おうなんて思ってないからいいわよ」
公人「ぉぃぉぃ、軽く30万超えてるぞ……」
空「それくらいの蓄えはありますので公人さんは心配なさらないで下さい」
公人「そういう訳にはいかないだろ」
 夏海は妖しい微笑を浮かべて擦り寄ってくる。
夏海「そこまで言うのなら、今日から私の為に奉仕して貰おうかしら」
空「夏海、それは妙案です。私もそれに賛成します」
公人「マテ。往来でそういう事を言うなと言ってるだろうが」
 纏わり付く二人を引き離し脱力する。様々な視線でこちらを伺う人の波。
夏海「オーライ? あぁ、OKって事ね」
空「意味は違いますが、その解釈を今はお勧めします」
公人「疲れる……」

 どこからか歓声が聞こえてくる。見ると駅前の広場に物凄い人だかりが出来ていた。
公人「あれ何だろ。何か歌が流れてきてるような気がするんだけど」
夏海「ん〜、アイドル系? ちょっと見てみる?」
空「私は特に興味ないのですが、二人が行くなら付き合います」
公人「夏海に任せるよ。荷物も重いものは配送して貰ってるし」
夏海「それじゃ少し覗いてみましょ」
 野次馬根性丸出しの夏海は期待で踊りだしそうな勢いだ。
 口に出したら殴られるけど。

 簡易特設ステージといった感じの舞台上で歌い踊る女の子。
 そして簡易テーブルを並べ、グッズらしき物を販売しているらしい黒ずくめの男達が見えた。
夏海「……帰るわよ、公人」
 冷徹な口調で告げ、くるりと踵を返す夏海。
女「あれ、帰っちゃうの〜? 人の顔見て逃げるようにしなくてもいいじゃん」
 声はステージ横に置かれたスピーカーから流れてきた。



09-04

 夏海は振り向き、女を睨む。
夏海「興味失っただけよ、気にしないで続けて頂戴」
 先程まで歓声を上げていたギャラリーは、何が起こったのか判らずざわめき始める。
空「帰りましょう」
 クーは俺の手を掴むと歩き出す。一体何が起こってるのか理解できなかったが、二人の態度が尋常ではないので何も聞けず付いていくしかなかった。

 歩道に大きな影が降り、前方に先程の女が舞い降りる。
女「いい態度じゃない。私のステージ、雰囲気悪くなっちゃたわ」
 慌てて後を向く。先程のステージからは30m弱。今立っている場所を考えると最低でも
 10mは跳んで来た事になる。
公人「い、一体何者なんだ……?」
女「名前くらいは教えてあげるわ。降天の声妓、マイよ」
 夏海がイラついた声で吐き捨てるように声を出す。
夏海「で、そのバク転のセーギが何の用?」
マイ「貴方の連れは生意気ね」
 そう言うと物凄い速度でこちらに飛び込んで来る。気が付くと喉を掴まれ片腕で宙に引き上げられていた。

空「公人さんを離しなさい!」
 クーは荷物を投げ捨て、マイに突進し脇腹に膝蹴りを叩き込む。
 だが衝撃で後ろに下がっただけで首を絞める力は緩まない。
夏海「マイ! ふざけるのも大概にしなさいよっ!」
 マイは呆れたように溜め息を付くと、こちらを見て口を開く。
マイ「貴方、運が悪いわね。状況が判らないような女の相手をしなきゃならないなんて」
 そう言って首を絞める力を徐々に強める。全身の力が抜け始め手にしていた袋を落とす。
夏海「クー、マイの腕を!」
 二人は一斉にマイに飛び掛るが、マイは寸前で俺の首から手を離し後ろ向きに飛ぶ。
マイ「あ〜怖い怖い。 ……飽きたから帰るわ〜」
 そう言い残すと飛び跳ねるようにして去ってゆくマイ。
 駆け寄ってくる二人に抱き起こされる。
 ホント長閑ながらも刺激的な生活だよ……



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© ◆ForcepOuXA


2006-02-15作成 2006-02-16更新
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