公人「さっきの電話の件なんだけど、急用ができちゃって帰らないといけないんだ……」
二人はその言葉に顔を曇らせる。
空「急用では仕方ありませんね」
夏海「そっか。……こっちも友達に遊ばないかって誘われてるし気にしなくていいから」
クーは柔らかく表情を崩すと、腕の中へ滑り込んでくる。
空「私たちも早く戻るようにしますから、公人さんも早く帰ってきて下さいね」
まるでどこに向かおうとしているのか知っているかのようにも思える態度。
『俺が守るのはこの二人』
気が付くと二人を抱き締め、その肩に顔を埋めていた。
夏海「どうしたの、公人? 人前では嫌なんじゃなかった?」
公人「……俺からは二人以外は見えない」
空「帰ったら甘えさせてあげます。たまには年上らしいところも見せますよ」
夏海「あはは〜、クーじゃいつの間にか甘えることになるわね〜」
励ますように、普段と変わらないように振舞う二人への想いが膨れ上がるのを感じる。
顔を上げるとクーと視線が合う。
そのまま引き寄せると、だた優しく唇を重ねる。
空「……公人さん?」
クーは驚いたかのように少し視線を上げる。
それを見て唇をゆがめている夏海にも同じように。
公人「……それじゃ、帰ったら一緒におせち料理食べるか」
空「はい。そうしましょう」
夏海「たっくさん用意してあるんだから残さず食べさせるからね」
公人「おせち料理を一日で食べさせるなよ」
少なくとも笑顔だけは戻った二人に背を向け車に向かう。
一部始終を見ていたらしい者たちの間を抜ける。
今はもう周囲の視線は気にならない。
これから向かう先にいる敵を倒すことだけ考えていた。