「そんな事より、クーはこんな所で何してるんだよ」
顔を見られないように横を向き、問いただす。
だが、心を見透かされたような気分になり、ぶっきらぼうな口調になってしまう。
「ボクはさっきも言ったとおり、散歩。キミの答えは?」
「え、答えって?」
既に顔を見られないように横を向いていたことも忘れ、クーを見詰める。
目尻は下げたまま、冷静な表情で口を開く。
「だから。キミはここで何してるの?」
「……散歩」
「そっか」
納得したように頷くと、クーは腰を屈め雪を手に取る。
サラサラとした雪はクーの手のひらからこぼれ、光を反射する。
「綺麗だよね」
雪をもてあそびながら呟く。
「…………うん」
クーは勢いをつけて立ち上がると、上目遣いで俺の顔を覗き込んできた。
突然の行動にたじろぎ、後に下がろうとしたところで雪に足を取られバランスを崩してしまう。
「あ、あぶない!」
俺に向けて手を伸ばしてくるクー。しかし、その手を掴むことなく倒れこんでしまう。
「あ〜ぁ、大丈夫?」
「だ、大丈夫。下は雪だから全然痛くなかったし」
「よかった」
クーはにっこりと笑顔を向けて手を差し出してくる。
その手を掴むと慎重に立ち上がろうとした。だが、クーは引っ張り上げる途中で体勢を崩す。
そのまま二人して雪に埋もれてしまう。
「大丈夫か、クー!?」
俺の胸に顔を埋めるように倒れこんだクーは、顔を上げると笑い出した。
「あはは、ボクは大丈夫。キミは痛いところない?」
「俺も大丈夫」
そのままの体勢で顔を覗き込んでくる。
「な、なんだよ……」
「やっと普段どおりになったかな?」
「何がだよ」
「さっきから変に緊張してるから、どうしたのかなぁって」
確かに普段とは違うクーを見て、少し態度が硬かったのかも知れないと気付く。
「こうして抱き付いていれば普段どおりのキミになってくれる?」
「そ、そんな事しなくても普段どおりになるって」
「でもダメ。ボクはこっちの方がいい」
そう言って背中に腕を廻してくる。
当然全身から熱が噴き出す。首から上は既に真っ赤になってるだろう。
「照れてるね」
「当たり前だろ!」
「でもね、離してあげない。折角のチャンスは無駄にしたくないから」
そう言って腕に力を込めるクー。
「……チャンスって何だよ」
「まだ分からないんだ〜。そういうところも好きだな」
世界を白く染める雪がまた降り始める。そこは幻想的な白銀の世界。