真なるクー
俺は古びた洋館を手に入れた。
その経緯を書き出すと長くなるので省略するが、簡単に説明すると会ったこともない叔父の所有していた物件だという。
また その叔父は変わり者だったらしく、親戚とも交流を図らず、いまどき流行らない『人里離れた深い森に建つ洋館』に篭る生活だったらしい。
そんな 存在することすら知らなかった叔父からの手紙が俺宛に届いたのが、つい先日。
三ヶ月連絡がつかなかった場合、ランダムで親戚の誰かに手紙を出す事にしてたらしい。
そんな意味不明の行動に付き合わされる弁護士に同情したもんだ。
まぁ実際には、手に入れたとはいっても管理人として雇われたと考えた方がよさそうな内容の手紙で、好き好んで辺鄙な森の中の屋敷に行ってみたいと思う人もいなかっただろう。
そんなこんなで俺は残暑厳しい都会を離れ、避暑を兼ねて屋敷に出向いてきたわけだ。
「うわぁ…… これは本格的な洋館だなぁ」
まるで大正ロマンとでもいう感じの古びた洋館がそこにあった。
蔦が程好く絡まり、まるで映画のセットでも見ている気分になる。
「メイドさんが居たら似合うだろなぁ」
しかしそこは現実の悲しさ。人を雇う資金なんてないのだ。
屋敷を見て驚いていても仕方ないので、数日分の日用品を持ち込み最低限生活できる空間を確保する作業に取り掛かった。
日が暮れる前に最低限の作業を終えリビングでくつろぐ。
装飾には無頓着な叔父だったらしく、思ったより簡単に掃除は終わった。
しかし、ここにきて俺は後悔していた。
テレビもビデオデッキもあるのにアンテナが繋がっていない。読んで楽しそうな本もない。
大量の本が図書室にあったが、どこの言語で書かれているのかもわからないものまである。
叔父は一体何者なんだろう……
手当たり次第に本を見てまわり、解読用のノートを発見した俺は、暇つぶしに解読ゲームでもしてみようかと関係しそうな本を手当たり次第に集めてきた。
「だめだこりゃ。解読なんてそうそうできるモンじゃないな……」
一時間も経たないうちに解読に飽きてしまう。
「まったく。ここにはゴミ箱すら置いてないし、まともな生活してなかったみたいだな」
そこでふと図書室に置かれた骨董品らしき容器を思い出す。
「あ〜、手頃な大きさだったなぁ…… ビニール袋で汚れないようにすればいいか〜」
図書室に向かい容器を手に取る。
見た目より重く感じるが、持ち上げられないこともないし安定感もありそうだ。
「なんか細かい文様が入ってるし年代物っぽいけど、後で洗っておけばいいよな……」
ゴミ箱すら用意してない叔父が悪いと決め付け、リビングに運び込む。
中を覆うように大き目のビニール袋を被せてゴミ箱は完成した。
しかし、解読すら諦めた現状では何もすることがない。
掃除で体力を使った後ということもあり、街まで行く気力もない。
「仕方ない。今日は持ってきたビデオでも見て過ごすか」
用意は簡単だ。ビデオテープとちょっとしたアイテムを持ってくるだけでいい。
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© ◆ForcepOuXA
2006-08-26 作成 2006-10-01 更新
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