数十分後、熱き男の戦いが終わりを迎えた。
詳細は省略するが、歴史に残るほど充実した戦いだったといえよう。
身の回りを片付けていると、何か妙な音が聞こえた気がした。
周りを見回すが、テレビから流れる音声と映像以外に日常からかけ離れたものは存在しない。
何か言い知れないものを感じながらも、これから夕飯の用意もしなければならないのでいそいそと片付けをする。
その時、突然 部屋の照明が落ち、周囲が明滅する。
驚いて辺りを見回すと、ゴミ箱の文様が光を放ち、それに呼応するかのように図書室から持ってきていた本から不気味な詠唱が聞こえてきた。
「な、なにこれ……」
その詠唱と文様の明滅が最高潮に達し、何もないはずの空間に何かが形成されていく。
何もできずに放心していると、床に降り立った女が口を開いた。
「我が名はクー・トゥルー…… 真なるクー。我を目覚めさせたのは貴様か?」
あまりの現実感のなさに絶句する俺。
目の前に立つ女王然とした女は腰に手を当て、超然とした笑みを浮かべている。
だがしかし、いくら格好をつけても旧スク水姿では締まらない。
「なんだ、お前は話す事もできないのか? 我は長い眠りから醒めたばかりだというのに」
「……アンタ何者だ。どこから湧いてきた」
「この痴れ者め。我が名は真なるクーと言ったではないか。それに我を覚醒させたのは紛れもなく貴様だ」
そう言ってゴミ箱の中に手を伸ばす女。
咄嗟にスリッパブーメランで女の頭をはたく。
怒りのこもった冷徹な瞳でこちらを睨むスク水の女。
「何をする。この無礼者」
「それは俺の台詞だ。一体何をしようとした」
「お前が我を呼び出した証拠を見せてやろうとしているのだ。ここにお前が贄として──」
そう言って再度ゴミ箱に手を差し入れようとする女に、スリッパハリセンをくらわす。
「つっ! ……貴様、我に対して再三の無礼なる行為、万死に値する」
剣呑な雰囲気をまといゆっくりと立ち上がる。
その殺気のこもった空気に当てられ、俺は身動きが取れなくなる……
死を覚悟した俺の耳に女の不思議がる声が聞こえた。
「む? 一体どうしたことだ」
あごに手を当てて考え込む旧スク水姿の女。
「おぉ、そうであった。これを使えばいいのか」
そう言って屈むと、ゴミ箱に手を伸ばす。
「だから手を突っ込むな────っ!」
爽快な音を立ててスリッパハリセンが炸裂した。
涙目になってこちらを睨む女。それに対して今や圧倒的優位に立つ俺。
「これは我に奉げられたものぞ。どう使おうと我の勝手ではないか」
「使ってどうするつもりだ」
「いまだ生まれえぬ一億の生命の源。この力をもって貴様を懲らしめ……」
今やスリッパは俺の両手に揃っている。その威容におののく旧スク水女。
「卑怯者め、本気を出した我にかなうとでも思っているのか」
「それで、今ホンキを出せる状態なのか?」
眉をしかめ不機嫌そうにこちらを睨みつける。
今まで余裕がなくて気付かなかったが、絶世の美女と言っても過言ではない美貌の女。
その冷徹な瞳はあらゆる者が恐怖におののきつつも魅入られてしまうほど美しい。