陸海空 -Caress of Venus-

序章 第三話 DIVE TO BLUE -III-



03-01

夏海「そろそろ夕食の準備にかかろうかな」
 津川は立ち上がるとテーブルの上を片付けだす。
空「では、私も一緒に」
 ピタっと動作を止めて陸海さんに向き直る津川。

夏海「クー、それはそういう意味かしら?」
空「その様に受け取って頂いて構いません」
 それをさらりと受け流す。
公人「一体何の話をしてい──」
夏海「公人、あなたはゆっくりテレビでも見てくつろいでいなさい」
空「お口に合うか分かりませんが精一杯頑張りますのでお待ち下さい」
 二人から例えようのない気迫を感じ身動きできなくなる。

公人「え〜と、夕飯の準備だよね?」
夏海「そうよ。さっきそう言ったでしょ」
 にっこりと微笑む。確かに棘のない笑顔だが、反論を許さない何かがある。
公人「ぁ…… あはは〜、楽しみにしてます」
 半ば強制的にテレビを見る事になった気もしないでもないが、キッチンの方を見ると仲良く料理しているように見えなくもない。
 だが調理というよりスポーツでも見ている気分になるのは気のせいだろうか……



03-02

 二時間後、目の前のテーブルは小皿で埋め尽くされていた。
 言い知れぬ恐怖をダイニングテーブルの方にも感じ、聞いてみる。
公人「ソファの方で食べるんだ……」
空「はい、少し作りすぎたようで、あちらのテーブルも埋まってしまいましたので」
夏海「一口サイズのものばかりだから小皿使い切っちゃってね〜」
 それでもかなりの分量だと思う。

公人「いや、こっちのテーブルだけでも何人分に相当するんだ?」
夏海「え? う〜ん、二日分くらいの食材があったけどアンタ男だし食べられるでしょ」
空「夏海の料理なら冷めても美味しいですから心配しないで下さい」
 ってことは残しても大丈夫……
夏海「まぁ最低でも一品ずつ味見はしてもらうけどね」
 退路は絶たれた。



03-03

夏海「では、まず乾杯から始めましょ」
 思う存分調理して気分がいいようだ。グラスを用意してワインを注いでくる。
公人「あまり強い方じゃないから程々にな」
夏海「みんなお酒に弱いから無理させる事もないから大丈夫だって」
 あはは〜とグラス半分くらい注ぐ。全然遠慮してないじゃん。
空「夏海、私にもワインを」
 つぃ、っとグラスを差し出してくる陸海さん。
夏海「お酒ホントに弱いのに大丈夫? まぁ止めたりしないけど」
空「今日から私は素直になる事にしましたから」
公人「じゃぁ素直な陸海さんに乾杯ってことで」
 乾杯〜とグラスを軽く合わせて口にする。結構いいワインみたいだ。

 二人を見ると軽く赤くなっているが普段と変わらないように見える。顔に出るタイプってわけじゃないんだなぁ。
夏海「さて、一つずつ味わって貰いましょうか」
 にっこりと笑う津川。まぁ二人して言うくらいだから本当に美味しいんだろう。
 料理に手を伸ばそうとした時、陸海さんがすぐ隣に座りなおす。
夏海「むっ」
空「まずは私の料理から食べてみて下さい。夏海の料理の後では不利すぎます」
公人「あ、うん。どれが陸海さんの作った料理なの?」
 陸海さんは一皿選び出すと自分の手元に運び、箸で摘まむと俺の口元に運ぶ。
空「あ〜〜ん」



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© ◆ForcepOuXA


2006-02-15作成 2006-02-16更新
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