陸海空 -Caress of Venus-

序章 第五話 DIVE TO BLUE -V-



05-01

夏海「今日は早いじゃない。深夜にならないと帰ってこないんじゃないかと思ってたわ」
 津川は突然の理奈の登場に、慌てて上半身を離す。
理奈「夏海は私がいない間に何かしようとしてたの? 彼、公人君だったっけ?」
空「ええ、そうです」
 陸海さんは所有権を主張するかのように俺を引き寄せる。恥ずかしいからやめてくれ……
理奈「取らないから安心しなさい。でもクーがこんな事してるのは興味深いわね〜」
夏海「それは私なら普通にこういう事してると言いたいのかしら?」
 冷気を纏った笑顔を理奈に向ける。つぅか津川、ブラしまえ。

 つかつかとテーブルまで歩いてくると、空いてるソファに座り料理を摘まむ。
理奈「手料理と色仕掛けで攻略中、と。あぁ、こっちは気にしなくていいから好きなだけ張り切りなさい」
 二人を止めろよ。

夏海「人の作った料理を勝手に食べておきながら、好き放題言ってくれるじゃないの」
理奈「これくらいいいじゃない。公人君、食べきれないでしょ?」
公人「流石にこれは多すぎるし。つぅか、二人をどうにかしてくれ」
理奈「そういう面倒事には首を突っ込まない主義なの。頑張ってちょうだい」
 類は友を呼ぶって事か……

空「これは私が作った料理です。お一つどうぞ」
 料理の載った皿を理奈に手渡すと、隣に座りなおし当然のように抱き付いてくる。
理奈「公人君も好かれてるわね〜。いつからなの?」
空「今日です」
理奈「それはまた強烈なアプローチね〜。……ん? クー、料理上手になってるじゃない」
 陸海さんの作った手料理を摘まんでビックリした表情を浮かべる。
空「公人さんへの愛が詰まってますから。リンにも褒めてもらえて嬉しいです」
理奈「夏海の料理は相変わらず何が起こってるんだか分からない味だしね〜」
夏海「それって絶対褒めてないでしょ」



05-02

理奈「そんな事ないわよ。以前この料理の謎を解明しようとして組成とか調べた事があるんだけど、至って普通だったのよね〜。
それで同等の食材と考えうる限り最高の料理人を用意して実験してみても、夏海の料理には到底及びつかない出来だったし。
まぁ仕方がないから、オーパーツの一種だと考える事にして研究チームは解散させたのよ。あの時は悔しかったわね〜」
夏海「研究チームって、アンタなに馬鹿な事やってるのよ……」
 流石は津川の友人、どこかおかしい。

理奈「で、公人君って何してる人? 大学生なの?」
夏海「そういえば聞いた事ないわね」
公人「あ〜」
空「私達と同じ大学の2回生で専攻は情報学、夏海のアルバイト先の常連で住所は──」
公人「ちょっと待──!」
夏海「ちょっとクー! 何でそんな詳しい事まで知ってるのよっ。それに公人が私達の後輩って本当なの!?」
 全然喋れん。女同士の会話に参加しようとする事自体間違ってるのかも……

空「夏海が突然アルバイトを始めた理由を調べてみたところ、原因の一端に公人さんが絡んでいる可能性が出てきたため、少しだけ調べさせて頂きました」
夏海「なっ!」
公人「まさか興信所とか使ったわけ?」
空「いいえ。それくらい自力で可能ですし、逆に怪しまれる原因になりかねませんから。安心してください、ゴミ袋を漁ったり盗聴、盗撮の類はしていませんから」
 ……それは安心出来るのか?

理奈「つまり、夏海に好きな男が出来たので問題があるのかどうか素行調査してた。話をして人柄に惹かれていたところ、ここ数日以内に夏海が「好きじゃない」発言。今日になって優しくされた事が引き金になって公人君に告白ってところかしら」
空「おおむねその様な感じです」
夏海「って、何で私が公人の事なんて好きにならなきゃいけないのよ!」
 相変わらず鋭角的な…… もはや何も言うまい。



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2006-02-15作成 2006-02-16更新
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