陸海空 -Caress of Venus-

序章 第六話 DIVE TO BLUE -VI-



06-01

 この状態の二人に勝てる見込みが全くないのは今日充分理解したので、最初に断っておく。
公人「背中流すだけだよな?」
空「はい、それで構いません」
夏海「え〜〜、全身がいいんだけど〜」
公人「夏海の意見は却下」
 壁際に歩いていく気配。後を確認したいが未だに裸だと困るので見る事ができない。
夏海「あ、ごめん。手が滑った」
 頭から背中に冷えた液体が掛けられる。声が聞こえてから掛かったんだが、未来予知でも出来るのか?

空「いきなりシャンプーを掛けるのは感心しません」
 と言って、手の平でシャンプーを背中に塗り始めるクー。
公人「ちょっと、それはマジでくすぐったいって」
夏海「折角タオルで身体を隠したのにそういう事言うわけ?」
 その台詞を信じて後ろを向く。
公人「だからって手の平で洗われたらくすぐ──」
空「ただ私は夏海と違ってハンドタオルなので、全身は隠せませんが」
 クーの台詞は殆ど理解できなかった。なぜなら胸にタオルを巻いているだけだったから……
 つい、凝視しそうになって慌てて夏海の方に目を逸らす。

夏海「見たいなら素直に見たいと言いなさいよ」
公人「時と場所ってモンがあるだろっ、こんな状態で見せられても困るだけだ!」
空「では、その時と場所を教えて頂ければ存分にお見せします」
夏海「そうね、それを知らないとクーを出し抜けないわ」
公人「ぃゃ、そういうモンでもないんだけどね。つぅか、お前ら友達なら仲良くしろよ」
夏海「あら、女の友情なんて男が絡むと紙より薄いわよ?」
空「安心してください。公人さんの事に関係ない事であれば今まで通り親友です。
それよりも、どの様な状態ならばいいのですか?」
 身を乗り出して問い詰めようとするクー。キス攻勢によって少しは動揺しなくなったが、今は胸をタオルで隠しているだけだ。見ないようにしても本能で視線が下がってしまう。
夏海「早く答えなさい。そうすれば楽にしてあげるわよ?」
 楽にしてあげるって一体何する気だ……



06-02

公人「普通そういう事をするのは恋人同士とかそういう感じの関係だろ」
空「では今すぐ恋人だと認めて下さい」
夏海「それいい考えね〜。今から公人は私の彼氏ね、決定」
公人「勝手に決めるなーーっ。大体二人とも認めたら二股になっちゃうだろ!」
 顎に手を当てて考え込む二人。
 タイミング、ポーズともにぴったり合っている。ギャグか?

空「そういった選択肢があるのは盲点でした。しかし、夏海なら仕方がないです」
夏海「まぁ確かにクーと、っていう時点で間違ってるのよねぇ。仕方ないか〜」
 おい、貴様ら。何か間違った方向に結論付けようとしてないか?
空「不束者ですが、夏海ともども宜しくお願い致します」
夏海「その提案を認めてあげるんだから、平等に扱わなかったらどうなるか分かってるわね?」
 勝手に結論付けて抱きついて来る二人。慌てて引き剥がす。
公人「だから、そんな提案してないし。離れろって!」
 不満を隠そうともしないし、態度とか違っても仲がいいとここまでシンクロするのか?

公人「大体何で俺なんだ? 正直な感想として、二人だったら誰でも選り取りみどりだろ。何の取り得もない俺に好意を寄せる理由が全く分からない」
空「私は先程リンが推察した通りの理由です。真面目な性格で曲がった事が出来ない性格、強引な手法も使いますが場を和ませる話術、困った人を放置できない優しさ。
挙げたらキリがありませんので一言で済まします。貴方の全てが愛おしいのです」
 まるで最初から用意してた文章を読み上げるかのように、淀みなく言い切る。
 これだけ完璧な人が好きだと言ってきて、戸惑うなと言うのが間違いだ。

 返答のなかった夏海に視線を向けると、夏海は視線を外す。
夏海「クーが言ったのと同じ。ってのじゃダメか…… 公人は容姿やスタイルだけ見てるヤツらと違うし、女を道具やアクセサリーくらいに思ってるわけじゃないでしょ。
私達はそういうのに敏感なの。対等に付き合えないなら付き合う必要がないだけよ」
空「夏海にここまで言わせておいて逃げるつもりですか?」
夏海「クー。大丈夫、心配しないで。公人はそんな男じゃないわ」
 お前ら退路絶つのホント上手いよな……
公人「分かった。だけど洗って貰うのは上半身だけだからな。」



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© ◆ForcepOuXA


2006-02-15作成 2006-02-16更新
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