空「私が言いたいのは恋人という関係についてです」
そろそろ風呂から出ようよ、マジで。
公人「じゃぁ正直に言おう、クーも夏海も俺には勿体無いくらいの女だ。そんな二人に同時に告白されて片方を選ぶなんて出来るほど、俺は器用じゃないんだ。
今までそういう目で見てた訳じゃないしな」
夏海「じゃぁ選ばなければいいじゃない。私はクーだけなら構わないわよ」
公人「お前は人の話聞いてないだろ…… 一人でも持て余すのに二人ともなんて無理」
空「私はそうは思いません。二人でも公人さんに釣り合いが取れていないのです。
ですが、他の女性に奪われるのは我慢ならないので夏海以外は許せません」
理解不能だ。ほぼ完璧と思われる美人二人と平凡な男一人で釣り合うなんて……
夏海「私達はそれだけの価値が公人にあるって言ってるんだからいいじゃない」
空「では、公人さんが私達二人に釣り合えると思えるように自分を磨いて下さい。私達はそれに見合うように努力するだけです」
夏海「結論が出たところでおねぇさん達に全て任せなさい、悪いようにはしないから」
公人「だが断る」
憮然とする二人。これだけは譲れないので俺としても絶対に引けない、つぅか引かない。
沈黙を破ったのはクーだった。ふふ、と軽く笑う。
空「公人さんのそういうところに惹かれるのです。さぁ夏海、これ以上話すのならお風呂を済ましてからにしましょう」
夏海「仕方ないかぁ。でもこれだけは覚えておきない。公人は絶対に私を好きになる」
公人「どこからそんな自信が出てくるんだ……」
空「それは夏海ですから。では、私が背中と頭を担当しますから夏海はそれ以外の部分をお願いします。」
夏海「聞き捨てならない台詞ね…… まぁいいわ、頭と背中以外ね〜」
夏海はニヤリとしか表現できない笑顔で、手をわきわきさせて近づいてくる。
公人「頼むから手の平で洗うのだけはやめてくれ」
空「では、これを使って下さい」
何の躊躇もなく胸に巻いていたタオルを夏海に手渡す。慌てて二人に背中を向けた。
公人「クー、頼むから俺の目の前で無闇に肌を晒さないでくれ……」
空「私は公人さんなら構いません。それにさっきから夏海の方に視線を向けていたので大丈夫だと判断したのですが……」
公人「胸にしかタオル巻いてないからクーの方を見られるわけないだろっ」
夏海「じゃぁ私はタオル巻いてるし、たっぷり堪能して貰わなきゃね〜」
嬉しそうだな、夏海……
空「では、夏海が公人さんを洗っている間に、自分の背中以外を洗っておきます」
公人「え、だってタオルもうないんじゃなかったっけ?」
夏海「ボディブラシくらい置いてあるわよ」
一瞬の思考停止。多分脳波までフラットだったろう。
公人「ボディブラシがあるならそれを使えばよかっただろっ」
夏海「相変わらず馬鹿ねぇ、ボディブラシ使ったら身体を洗ってあげる意味ないじゃない」
まぁ確かにそうなんだが。
空「本来なら素手で洗って差し上げたいのを我慢してタオルで使うのですから」
公人「あ〜〜〜、俺が悪かった。タオルで洗って下さい」
夏海「は〜い、腕を出して〜〜」
俺の正面に座る夏海。
公人「待て、その格好は俺の精神状態に著しい変化を及ぼす。せめて横からとか──」
夏海「いちいち反対側に回ったりするの面倒じゃない、お望みなら後から洗うけど?」
背中からだと胸が当るだろうが…… どうしようか悩む。
夏海「いいから腕を出しなさい。ぐだぐだしてると凄い事するわよ!」
空「夏海、凄い事お願いします。後学の為に研究させて下さい」
公人「ちょっ、凄い事しないから! つぅかお願いだからするな」
夏海「今から公人には発言権なし」
無理矢理腕を掴み引っ張る。バランスを崩されるが何とか持ちこたえた。
お互いに前傾姿勢になったため、目の前にバスタオルで強調された夏海の胸が。
公人「ばっ、お前いきなり引っ張るなっ。突っ込みそうになっただろ!」
夏海「はい、ペナルティ一つっと」
不安定な体勢のため軽く引っ張られるだけで、簡単に夏海の腕の中に取り込まれる。
そのまま顔を上げさせられ唇を奪われる。……普通逆だよな?