06-09

 諦めて扉を開け廊下に出る。一瞬の沈黙の後、笑い出す夏海。
夏海「それいいっ。公人、アンタ明日からその格好に決まりね! ね、クー」
空「はい、公人さんは何を着ても似合います」
公人「…………褒めてない。つぅか嬉しくない」
 しかし、クーは結構ホンキで似合うと言ってる気がするんだが気のせいか?
夏海「さぁ、部屋に行きましょ。もう準備は出来てるんだから」
公人「準備って何の──」
空「パジャマパーティだそうです」
 それは嫌味か?

 パーティ会場はクーの部屋だという。多分夏海の部屋には三人入れないのだろう。
 いや、勘なんだけどね。言ったら何されるか分からないし言えないが。
 部屋の中央にあったであろうテーブルは壁際に立てかけられ、その位置にお菓子や料理、ティーセットが置いてある。つぅか、こんなに並べるならテーブル片付ける意味あるのか?
空「好きな場所に座って下さい」
 タオルケットを巻いているので座りにくいが何とか座ると、紅茶を差し出される。
 アフタディナーティーみたいなモノらしい。

夏海「では、公人の入居祝いを兼ねて乾杯〜」
公人「ちょっと待てーー! 入居って何だ入居って!?」
夏海「ん? お風呂でクーと二人きりの時に決めたらしいじゃない」
空「公人さんはあのお風呂がいたく気に入られたそうです」
 数十分前の事を思い出そうとするがあまりにも衝撃的な場面が多く、そういった会話が思い出せない。
公人「確かにいい風呂だなぁとは言った気もするけど、入居するとは言ってないと思うけど」
 意に介さずといった風情でこちらを向くクー。
空「まずは乾杯です」
夏海「乾杯〜〜」
公人「……乾杯。で、実際言った覚えがないんだけど」
空「言いましたよ。思い出せなければ 第五話 05-07 を見てきて下さい」
 そういう事言うな。



06-10

夏海「まぁクーが言うんだから間違いないんじゃない。公人は覚えてなさそうだし」
公人「そりゃ今日はあんな衝撃的な事ばかり起きてるし、細かい事覚えてないけど……」
 クーを見ても冷静に紅茶を口に運んでいるだけで、嘘なのか本当なのか判断が付かない。
空「私の言葉が信じられませんか?」
公人「そういう訳じゃないけどさぁ、ここって女性三人だけで生活してるんだろ?
そんな所に俺が入って来ちゃマズイだろ」
夏海「実質二人だし、勿論クーも私も入居は歓迎するわよ」
空「空き部屋もありますし、家賃も食費も光熱費すら要りません。しかもお風呂は大きく、こちらの方が大学にも近いです」
公人「うぅ……」
夏海「しかもこんな美人が二人も住んでるし。まぁ、後の一人はどうでもいいわ」
 滅茶苦茶酷い事言ってないか?

空「実際、男手がないのは結構痛手なので、お願いしたいのですが」
夏海「荷物持ちとか痴漢、泥棒対策とかね。これでも苦労してるんだから、そういうのを引き受けてくれるならお金は要らないけど」
 すがるような目でこちらを見る二人。た、確かにそうなのかも知れないよなぁ。
 これだけの美人が女三人で住んでるんだから、色々大変かも知れない。
公人「……そう言われると断る理由がないんだけど、何か引っかかるんだよなぁ」
空「疑うのは当然です。ですが夏海の言ってる事も理解して頂けると嬉しいのですが」
夏海「公人って困ってる女性を見ても手助けしないの?」
公人「……分かった、その条件はこちらとしても嬉しいし、二人。いや、三人のためにもなるっていうのならここに住まわせて貰うよ」
 その言葉を聞いて頷きあう二人。その、何だ。無性に怪しいんだが……

公人「何か隠してないか?」
空「隠すと言うより論点をずらしただけです」
夏海「お風呂が気に入った、入居しないかって部分は合ってるわよ」
 何事もなかったかのように紅茶を飲む二人と呆然とする俺。
公人「詐欺だーーーー!」
空「何と言われようと私は公人さんと一緒に暮らせればそれで満足です」
 結局話し合いは一方的にスルーされて同居する事になった……



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2006-02-15作成 2006-02-16更新
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