12-07

 それは既にバイトですらない。
夏海「それじゃバイトの件は決定という事で乾杯〜」
 最近とみに影薄いよな俺……

夏海「あ。クー、そろそろ服買いに行こうか」
空「そうですね。公人さんを陥落する為にもお願いします」
 微笑ましいものでも見るような笑顔のマスター。
夏海「公人も来る? 実際に反応見た方が判断しやすいし。下着も買うけどね」
 意地の悪い笑顔を向ける夏海。
公人「二人で行ってこい……」

 二人は買い物に向かう。疲れ果てカウンターに突っ伏す。
益田「公人君モテるねぇ〜。羨ましい限りだよ」
公人「実際の状況を知っていたら、そんな台詞は出ませんよ」
益田「まぁ、そうだろね〜」
 あはは〜と笑うマスター。
益田「あぁそうだ、粗品渡さなきゃ。公人君、バックヤードまで来て貰える?」
 断る理由もないので、マスターとともにバックヤードへ向かう。

 食材や備品のダンボール箱が並ぶ棚の突き当たりまで行くと、壁際を探り出す。
 すると、壁がスライドし下り階段が現れる。振り向き笑顔を向けるマスター。
益田「さぁ、行こうか」
 何か嫌な予感がしつつも、マスターの雰囲気がいつもと違うような気がして断れなかった。

 地下室は何に使うのか分からない機械が並ぶ部屋になっていた。
公人「ここは一体何です……」
益田「分かりやすく言うと喫茶店の地下なんだけど。そんなのを聞きたい訳じゃないよね〜」
公人「……それくらいは分かりますからね」
 マスターはこちらを振り向くと口を開いた
益田「ようこそ、有限秘密結社へ。君は今日からヒーローになる」



12-08

 デパートの屋上。給水塔の傍に二人の女が立っていた。
 一人は全身を覆う白いマントに儀礼用のような装飾の施された長い杖を持ち、もう一人は腰までの黒いマント。その下は複雑な構成で成型されたボディスーツにフレアが付いた服を着込んでいた。
 材質さえ違えばエアロビクスでも始めるのかと思わせるいでたち。
 それだけでも特殊な二人だったが、頭から顔まで覆うマスクが現実とは異質な美を強調していた。

 屋上に設置された特設ステージではマイが歌い踊る。
 熱狂する観客と、簡易テーブルでグッズを売りさばく黒服達。
 そこに突如、先程の二人が舞い降りる。
マイ「な…… 来栖に華姫。なぜここにいるのよっ」
 来栖と呼ばれた白い女は儀礼杖を舞台に突き、答える。
来栖「君は少しやりすぎた。一般人を巻き込むのはルール違反だな」
華姫「まぁ、貴女のように力を持たない者には一般人を相手にするか、不意打ちくらいしか選択肢はないかも知れないけど」
 黒い女、華姫はそう言うと腕を組み直し、マイを見下すようなポーズを取る。
マイ「ふん、そんな事言っておきながら二人してやって来るなんて、私を倒す自信のなさの現れなんじゃないの〜」
 観客は何が起こったのか分からずざわめき出す。

来栖「そんな瑣末事知らないな。君の処分が決まる前に退場願おうという優しさだよ」
華姫「それに私は貴女が卑怯な手を使わないように監視するだけ。貴女程度に二柱が相手するなんて自惚れないで欲しいわね」
 マイが合図すると、舞台のソデから十数人の黒いタイツ男達が現れる。
マイ「来栖程度、私と部下だけで充分だわ。私をナメた事、後悔させてやる!」
 部下に合図するマイ。一斉に飛び掛ったタイツ男達は空中で全員弾き飛ばされる。
マイ「何…… 一体何をしたの!?」
 来栖は前に一歩出ると、左腕を軽く差し出し中指を親指で軽く押さえる。
来栖「デコピンだ」
 黒タイツの男達は額から煙を上げて失神していた。





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© ◆ForcepOuXA


2006-02-15作成 2006-02-16更新
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