マイ「何馬鹿なこと言ってるのよ!」
来栖「ふむ、そうなのか…… まぁ待て、コレは重要な事柄だぞ。まず、悪の手先という事は悪の組織があり、その尖兵として悪事を働いている事になる。
そして正義の味方という事は正義という存在があり、その味方と言うだけで正義そのものではないのだ」
マイ「……だから何なのよ」
来栖「つまり、絶対的な正義ではない君は絶対的な悪の元で働く私には勝てない。絶対的な力とそれ以外の力の歴然たる差だ」
『おおぉぉぉぉーーーー』
何の確証もない理論。言ってみれば詭弁の類だったが、自信満々に言い放つ来栖の話術に飲み込まれる観衆。
そして、その煽りを受けてマイは怯んでしまう。
華姫「……普通に考えれば適当なこと言ってるだけって分かるでしょうに」
マイ「例えそうだったとしても…… 最後に正義は勝つのよっ!」
いつの間にかマイは正義の味方になり切っていた。
全ての力を出し切り来栖に打撃を加えるマイ。風圧で来栖の髪や装飾が揺れるが、来栖はその場に以前と同じように立ったまま微動だにしない。
マイ「何で当たらないのよっ!」
来栖「君の攻撃は無駄が多すぎる。せめて一秒間に三打多く打ち込めれば当たるのだがな」
そう言って一歩踏み込む来栖。マイは盛大に吹き飛ばされ、舞台の支柱に叩き付けられる。
床に崩れ落ち、むせ込む。
華姫「まさか一撃で終わりなの? 大した事ないわね、バク転のセーギって」
目の前で物凄い光景を見せられ、ぽかーんと口を開いている子供を抱き直すと、一人ずつ指差し口を開く。
華姫「三人の中で誰が一番好き?」
その小さな男の子は三人を見比べ少し考えると華姫を指差す。
華姫「あら、嬉しいわね〜。じゃぁお礼しなきゃ」
そう言うと舞台を飛び降りて黒服に近づいていった。
貰うわよ、と黒服に言うと、自分が被っていたマスクと同じ図柄のお面を手に取り子供に手渡す。
華姫「来栖、それくらいじゃ気が済まないとは思うけど私に代わってよ。この子の期待を裏切っちゃ悪いでしょ」
来栖「そうだな。今日の賓客の意思は裏切れないか」
来栖は華姫から子供を預かると、手にしたお面を頭に付けてあげる。
来栖「これで、あのお姉ちゃんと同じになったぞ」
涼しげに微笑む来栖の笑顔を見てあどけなく笑う。
マイ「今更出てきて、弱った者の相手しか出来ないわけ?」
華姫「私は来栖ほどのスピードが出せないから、更なるハンデをあげるつもりで出てきてあげたのよ。
感謝なさい、バク転のセーギの味方さん」
マイ 「ふっざけるなぁぁぁーーーっ!」
どこにそれだけの力が残っていたのかと思える速度で飛び掛る。
それに合わせるように華姫は拳を打ち上げる。パキーーン、という硬質な音を立ててマスクと腕のプロテクターを破壊され、マイは吹き飛ぶ。
舞台に叩き付けられた瞬間、床で小さな爆発が起こり、七色の煙が立ち昇る。
『おおぉぉおぉぉーーーっ!』
拍手とともに巻き起こる華姫コール。来栖に抱き上げられた子供もぱちぱちと拍手。
来栖「さて、少年。お姉ちゃん達と記念写真を撮ろうか」
ポラロイド写真を手にして手を振る子供に軽く手を振る二人。
華姫「悪の手先が正義の味方倒しちゃったけど、どうしようか?」
喫茶店の地下で見つめ合う二人。理由は勿論何からツッコムべきか分からなかったから。
公人「え〜と、ヒーロー?」
益田「正義の味方とでも言えばいいかな?」
公人「まぁ普通は正義の味方だとは思うけど、何で俺が?」
益田「公人君は力が欲しくないかい? 例えば、あの二人を守るための力とか」