13-05

 確かに自分に出来る事が何かないかとは考えたが、ヒーローってのは突拍子もなさすぎる。
公人「だからってヒーローと言われても、ピンと来ないんですけど……」
 その言葉を聞いてマスターは機械に向き直り、ディスプレイに映像を流し始める。
 昨日の駅前での騒動が映し出される。
公人「これは昨日の……」

益田「今、日本の経済はある秘密結社に狙われている。現在はこの周辺地帯に限定されているが、着々とその手を伸ばし続けているのだ。
君が昨日出会ったこの少女は、その尖兵に間違いないだろう。
そこで、君には強化スーツを着込んで悪の野望を打ち砕いて貰いたい!」
 何か特撮番組でも見ている気分になる台詞。
公人「まぁ、一向にピンと来ないんですけど、何で俺が……」
益田「正義の味方に必要なのは愛だ! 人類愛とか郷土愛とか言ったところで、規模が大きすぎて実感が湧かないだろう。
だが、君には護りたい人がいる筈だ。
彼女達のために立ち上がり、悪の秘密結社を倒すのだ!」
公人「だから何で俺なのか……」

益田「…………バイト代は自給3000円ではどうだね?」
公人「うっ……」
 とても魅力的な条件が出てきて、ヒーローという存在に実感が湧き出す。
益田「勿論、それは喫茶店でのバイトに関してだ。正義の味方として活動、悪の手先を倒す度に能力給が追加される。しかも、医療関係も安心して任せてくれて構わない」
公人「ところで、マスターは一体何者なんですか?」
益田「喫茶店のマスターとは仮の姿…… その正体は有限秘密結社の司令官、益田だ!」
 普段の行動を見ているだけに、演技してるようにしか見えない。
公人「何で喫茶店なんです?」
益田「喫茶店。それが正義の巣窟の、古くから継承される真の姿だからだよ」
公人「巣窟って何となく嫌な響きですね」
益田「喫茶店に屯する正義の味方。黄色い奴はカレー好き。赤い奴は熱血。青い奴は……」
 長くなりそうだな、と感じていた。



13-06

益田「では、正義の味方になってくれるね?」
公人「危険な事もしますよね?」
益田「安心したまえ、先程も言ったとおり医療関係はこちらで用意するし。危険を少なくするためのルールが存在している」
公人「ルール?」
 遠くを見るような目をして虚空を見つめるマスター。
益田「……以前は確かにルールなんてものは存在しなかった。その為に我々も敵方も大量の犠牲者を出したよ。だが、そんな事が許される時代は終わった。
今では警察機関や法関係で、以前のように無秩序に戦う事が出来ない世の中になった。
そんな折、決定的な事件が双方に訪れたのだよ」

 冷静さを取り戻すかのように椅子に座るマスター。そして俺も座るように指示される。
公人「それで何が起こったんですか?」
益田「兵力バランスが崩れた。というか、バランス自体が存在しなくなった。双方とも壊滅寸前までお互いを潰し合ったのだよ。
その時、運命のいたずらとでも言うのかな、首脳者会談を開くチャンスが出来てね。
その話し合いで不可侵の協定。ルールが結ばれた」
公人「その話、長くなります?」
益田「……ルールについてはこれを読んでくれ」

 渡されたのは一枚の紙。
 そこには、一般市民を巻き込まない。破壊力を下げ決定的な打撃を与えない。など数箇条に及ぶルールが記載されていた。

 その時、昨日のクーの姿を思い出してしまった。カップを壊してしまい悲しむクー。
公人「正義の味方には興味はないんですが、悲しむ顔は見たくないんですよね……  それに借りた金は返さないと」
益田「そうか、やってくれるか! では、この外出許可証に……」
公人「やっぱり考え直していいですか?」
 外人部隊には送られたくない俺がいた。





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© ◆ForcepOuXA


2006-02-15作成 2006-02-16更新
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