最後の理性を振り絞って二人を引き離すと湯船にダイブ。
空「泡を落とさずにお湯に浸かるのは感心しません」
公人「そういう問題じゃねええぇぇぇぇえぇぇーーっ」
夏海「せっかく極上のサービスしてあげてるんだから途中で逃げないでよね〜」
脱力して水面下に沈みそうになる。
公人「それが問題なんだ。 ……二度と一緒に入らない」
不満の声を上げる二人は完全無視。こんな事じゃ次回は理性が崩壊する……
脱衣所に戻ると服を着込み、よろけつつも部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
そういえばこの部屋って全然使われてないよなぁ、と微妙に冷静な感想を漏らした。
二人が着替えを用意していなかった事に気付いて、タオルケットを手に脱衣所へ。
公人「風邪ひくといけないから、タオルケットここに置いておく」
返事は待たずに部屋に戻る。
ベッドに横になってボーっとしているとドアをノックする音。
空「公人さん、ごめんなさい……」
夏海「ごめんね。ちょっとやりすぎたかな?」
公人「こんな事が続いたら理性が持たない。少ししたら荷物まとめて出て行くから」
空「そんな…… 一体どこに行くつもりですか」
公人「住む場所が決まるまでは車の中ででも生活するし」
夏海「こんな時期に車上生活なんて出来るわけないじゃない」
公人「理性で本能を抑えられる内に出て行くしかないだろ」
空「公人さんは私達のことは嫌いですか?」
公人「嫌いだったら突き放せばいい。好きだから対処できないんだよっ」
重苦しい空気に耐えられず、ベッドから立ち上がると荷物をまとめ始める。
空「公人さんが出て行くというのであれば私も付いてゆきます」
公人「それじゃ俺が出て行く意味ないだろ。迷惑だ、来るな」
空「……では公人さんの迷惑にならない場所で、見守り、続け……ます」
クーは微かに震えながらも言葉を紡いでいく。
夏海「だから、こんな時期に野宿とか無理だって…… クー、大丈夫?」
空「私は、公人さんが…… さえいれ、ば…………」
徐々に震えが大きくなり、言葉を発する事も困難になりつつあるクー。
夏海はクーを抱きとめるとなだめようとする。
夏海「クー、大丈夫だから。公人が消える訳じゃないんだから安心しなさい」
尋常じゃないクーの状態を見て駆け寄ると、倒れないように抱きとめる。
クーは俺の腕を掴み何か言っているようだが、既に言葉として理解できるものではない。
公人「クー、しっかりしろ。大丈夫なのか?」
ふ、とクーの身体から力が抜け倒れ込む。気を失ったクーを何とか支えた。
夏海「ちょっと、クーっ。 ……公人、クーをベッドに」
脱力し切ったクーを何とか抱えベッドに横たえる。
夏海「まったく、そこまで思い詰めるなんて馬鹿なんだから……」
公人「クーは一体どうしたんだ」
夏海「アンタに拒否されて不安定になっただけでしょ。それよりも公人、こんな状態のクーを置いて出て行くつもりなの?」
公人「……そんな事するわけないだろ」
夏海「だったらクーを抱き締めて逃げないようにしなさい。 ……違う、前から!」
ベッドに横になって夏海の言うとおりにクーを前から抱き締める。それを確認すると夏海
は部屋の電気を消し背中に抱き付いてくる。
公人「夏海まで抱き付いてくる事ないだろ……」
夏海「ふん、一緒にお風呂に入らなければいいんでしょっ。これくらい我慢しなさい」
クーを見ると震えも止まり呼吸も安定している。
公人「クーは大丈夫なのか?」
夏海「そんなの私に分かるわけないでしょ。たぶん脳内麻薬の欠如による失神じゃないの」
そんなの言われても分からないんだが、俺の胸に抱き付いて寝息を立てるクーを見る限り
問題ないような気もする。
夏海「私も公人越しにクーを抱き締めておくから安心して寝なさい」
前後から抱きしめられて寝られるほど、俺はこの状況に慣れてはいなかった。