陸海空 -Caress of Venus-

第一章 第十一話 Butterfly's Sleep



17-01

 話し声と、前後から挟んで動く気配を感じて目を覚ます。
 窓から射し込んでくる朝日はほの暗く、起きる時間にはまだ早いようだった。
空「あ、起こしてしまいましたか?」
夏海「え〜、公人起きちゃったの〜」
 起き抜けに二人ともいるというのは初めてだった気がする。
公人「ん〜、何か起きちゃマズそうな意見が聞こえたんだが……」
夏海「そんな事ないわよ。ただ、明け方の寒い時間に布団から出るのは辛いなぁって話してただけだし」

 夏海は俺の身体に絡み付いていたクーの腕を離させる。
空「うぅ、もう少し……」
夏海「ダメ。公人、こっち向きなさい」
 半ば強制的に向きを変えさせる夏海。そのまま両面から抱き付かれる。
夏海「はい、公人の手はこっち。お風呂には一人で入らせてあげるんだから、これくらいは我慢しなさい」
 先に釘を刺されてしまったので諦めて夏海の身体に腕を廻す。

 気が付くとベッドにいるのは俺一人。時計を見ると既に8時を過ぎている。
 布越しとはいえ人肌の温もりというのは眠気を誘うのか、と考えつつ着替えを済ませる。
 洗面所で身支度を整えてリビングへ向かうと、三人がソファでくつろいでいるところだった。
空「おはようございます。よく眠れましたか?」
 残る二人もおはよ〜、と声をかけてくる。
公人「おはよ。いつの間にか寝直してたみたい」
夏海「朝食は出来てるけど温め直す?」
公人「あぁ、そのままでいいよ」
空「今日は用事があるので三人で出かけますね。時間になったら『せしる』で会いましょう」
 三人が出かけたあと食事を摂りながら、時間まで何をしようか考えた。



17-02

 とある施設の一室に三人の女が詰めていた。
 その内の二人は来栖と華姫で、強化スーツを着込んでいる。
 残る一人は青い強化スーツを着込んでいた。華姫のマントのように背中を覆い隠すような青いマントを付けているが、長さは踝付近まである。

華姫「流石に今日ばかりは、リデルも強化スーツを着るのね」
 華姫は壁際に取り付けられた姿鏡を見ながら化粧を施しつつ、青いスーツの女に話しかける。
リデル「華姫、ミネルヴァよ。強化スーツなんて名前で呼ばないで頂戴」
来栖「名前などどうでもいいではないか。指し示しているモノは一緒だ」
 重厚なエグゼクティブチェアに座り、紅茶を飲みながら来栖が答える。
リデル「お前達はニケを怪人スーツとか、アレスを戦闘員スーツとか呼ぶし、もう少し他の者に示しを付けようとする気持ちはないの?」
華姫「名前に拘ったところで、示しが付くとは考えられないわ」
来栖「その意見には同意する。それよりリデルも飲まないか?」

 リデルは乱暴に椅子に座ると紅茶を一気に飲み干す。
リデル「不味いわね」
来栖「ルージュを引いて飲めば味は変わる」
 静かにカップを傾ける来栖は二人と違い、未だに化粧はしていない。
華姫「来栖もメーキャップしておきなさい」
来栖「不味い紅茶を飲む趣味はない。時間までには終わらすよ」
華姫「じゃぁ時間が来るまでに最高幹部会を始めましょうか」

 三人が椅子に座ったところで華姫が口を開く。
華姫「では技術開発部総括から報告をして貰おうかしら」
 リデルはまとめられた書類を二人に手渡し話し出す。
リデル「現在の装備充実度は60%といったところ。パラスアテネの開発は難航してるわね」
来栖「……パラスアテネ?」
リデル「ミネルヴァ専用特殊兵装よ!」
華姫「あぁ…… あったわね、そんな計画」



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2006-02-15作成 2006-02-16更新
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