21-05

 言い終わるや否や、もう片方の耳もクーによって咥えられる。
公人「ごめん、俺が悪かったからそれだけはやめてくれ……」
夏海「耳が痛くて聞こえないわね」
空「駄目です。私も軽く難聴気味なので聞こえなかった事にします」
公人「あ、太陽が見えてきた! 初日の出、初日の出〜〜〜」

 苦労して二人を引き離して三人で初日の出を眺める。
 左右から拍手を打つ音が聞こえた。俺もそれにならって拝む。
 この二人が幸せでいられるように。そして、願わくば俺に被害が来ないように。


 袖を軽く引かれてそちらに目を向けると、クーが軽く目を輝かせている。
公人「ん、なに?」
空「朝日の中で見る振り袖は如何ですか?」
 そう言うと数歩後退し、軽く腕を広げてゆっくりと回転する。
 振り袖の刺繍がまばゆい光できらめき、クーの浮世離れた雰囲気と相まって、まるで光を纏った妖精のような雰囲気を醸し出す。
公人「……綺麗だ。クーによく似合ってる」
空「とても嬉しいです。ところで、綺麗に着飾った私とキスしたくなりませんか?」
 年上とは思えないような、相変わらずの反応に自然と笑いが漏れてしまう。
 笑われた事で軽く唇をゆがめたクーを引き寄せると、ゆっくりと優しく唇を重ねる。

 今回は途中で夏海の邪魔が入らなかったことが気になった。
 が、顔を上げると目の前に満面の笑みを浮かべた夏海が立っていた。
夏海「私の振り袖姿はどうかしら? 決してクーに劣ってはいないと思うけど」
 確かにきらびやかな振り袖だが、それに負けないだけの人を引き付ける魅力が夏海にはある。あらゆる存在を取り込んで自分の魅力としてしまう強烈な個性。
公人「その振り袖を着こなせるのは凄いな。とても素敵だ」
夏海「で、その素敵なお姉さんにはキスしてくれないのかしら」
 人差し指で自分の唇を数度触れると、夏海はにこやかに微笑んだ。



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© ◆ForcepOuXA


2006-07-27作成 2006-07-31更新
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