空「少し待ってて頂けますか? 今日は気分が良いので色々買ってきます」
夏海「そうね。公人、能楽堂で巫女装束を堪能してきていいわよ」
そう言うと返事も待たずに二人は社務所へ戻る。
二人の監視なく巫女さんを堪能する時間が与えられた喜びに、俺は軽いフットワークで能楽堂に向かった。
時間が経つのも忘れる幸福な時は、ウラシマ効果のおかげでごく短いものに感じられた。
夏海「堪能しているようね……」
公人「あ、あはは〜。おかえりなさいませ」
思わずしたてに出てしまうパブロフな俺。
恨みがましい目付きの夏海と、うなだれるクーが傍まで来ていたことに気付かなかった……
公人「クー、どうかしたの?」
空「申し訳ありません。巫女装束を用意できるかと思いましたが、現在すべて出払っているとの連絡がありました……」
夏海「新年早々そんなことはありえないだけどな〜」
持って来られても嫌だが、実際に無理だとわかると少し惜しくなる。
しかし、二人が元気な方が俺としても嬉しい。
公人「俺は二人が楽しそうにしてくれていた方が嬉しいから、気にしなくていいよ」
二人とも料理の腕はいいとはいえ屋台のお菓子類は別扱いらしく、わたあめやあんず飴を嬉しそうに買い求める。
空「わたあめ食べませんか? 甘くて美味しいですよ」
口元に差し出された わたあめに軽く口をつける。んむ、甘い。
夏海「はい」
にっこりとあんず飴を差し出す夏海。これも、甘い。
周囲の視線を気にしないようにのんびりと散策しつつ、駐車場へ向かう。
もう少しで駐車場に着くというところで、歓声、そして曲と歌が三人を出迎える。
公人「マイ…………」
そこには嫌な思い出しかなかった。