陸海空 -Caress of Venus-

第二章 第四話 NEO UNIVERSE -IV-



23-01

 駐車場の端に設置された簡易ステージを見詰め、険しい表情で立ち尽す三人。
 その空気を打ち破るように公人は口を開いた。
公人「あ…… ごめん、ケータイに電話きたみたいだ。悪いんだけど少し休憩してて」
空「はい、こちらはお気になさらず。ごゆっくりしてきて下さい」
 クーはかすかな笑みを浮かべ、離れていく公人を見送る。
夏海「クー、行くわよ……」
空「はい」
 睨むような目付きを隠そうともせずに夏海はステージへ向かっていった。

 二人はステージを見ることなく周囲を見回す。そして、目当ての人物を発見した。
夏海「武藤。これは一体どういう事なのか説明して貰おうかしら?」
武藤「こ、これは夏海様にク……」
 武藤と呼ばれた男は、クーの柔らかいが氷のように冷たい眼差しで言葉を告げなくなる。
空「私をクーと呼べるのは限られた人のみです」
 その言葉に萎縮し、姿勢を正して非礼を詫びる。
武藤「申し訳ありません、津川様、陸海様!」
夏海「硬くならなくていいわよ。それと様付けは困るわね」
空「すみません、私も言い過ぎました。武藤さん、今はさん付けでお願いします」
武藤「はい、気を付けます……」

 冷淡に言い放つクーと深々と頭を下げる武藤の態度見て、夏海は笑顔を取り戻す。
夏海「ほらほら、二人ともリラックスしなさい。どうせマイの仕業なんだろうし」
空「公人さんのことでは理性的でいられない私にも非はありますね……」
夏海「取り敢えず状況を説明してもらえないかしら」
武藤「はい。……昨夜マイ様からステージを開くと伝達がありまして、企画営業部、直営部隊ともに召集されて今に至っています」
夏海「直営部隊って…… まさか巫女装束を持ち出したのはマイなの!?」



23-02

武藤「はい、巫女部隊が控えています……」
空「…………許せません」
 問い詰めるような夏海の言葉と、静かに言い放つクーに、武藤は寒空の中 冷汗を流す。
夏海「総合戦略部に作戦案提出もなしに実行部隊まで動かすとはね〜。武藤、それがマイの独断だとしても、なぜ私たちに報告しなかったのかしら?」
武藤「連絡が届いたのが昨夜の十時頃でしたので、お二方にお伝えするのは……」
空「それでは仕方ありませんね。武藤さんに非はありません」
夏海「連絡してきていたら同罪だったわね」
 胸を撫で下ろした武藤が着信に気付いて携帯電話を取り出す。
武藤「申し訳ありません。少し席を外しても宜しいでしょうか」
空  「はい、構いません」

夏海「あ〜ぁ、これで公人は今日一日ブルー決定ね」
空「…………」
 二人は不機嫌な表情を隠そうともしない。
 新年早々、二人きりで不満げな表情を浮かべる二人に、声をかけようとする男達が
次々と現れるが、どこからか現れては消えてゆく黒服に連れ去られる。
夏海「黒服の仕事増やしちゃったわね。まぁ、変なのに絡まれたくないし助かるけど」
空「興味ないです」
夏海「クー。今はふてくされててもいいけど、公人が来たら年上らしいところ見せなさいよ」
空「……では、たっぷりと甘えさせてあげます」

 そこに武藤が慌てた様子で向かってくる。
武藤「大変です! 敵方第八支部とのゲームが開始されたとの報告が入りましたっ」
夏海「当たり前でしょ。元旦の、こんな場所で、馬鹿騒ぎしてるんだから」
空「これで、リンも不機嫌になるのは確定ですね」
武藤「止める事ができなかった私の不手際です。申し訳ございません……」
夏海「別に、私たち二人はオフだからいいわよ。無理しない程度に頑張りなさい」
武藤「はい、では準備にかかります。お二人も気を付けて下さい」
 走り去る武藤を眺め、二人は深い溜め息を吐いた。



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2006-08-04作成
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